道徳の危機

道徳教育が崩壊した原因は、敗戦にあると思っている。
昭和一桁〜10年代生まれの方は、教科書の墨塗りを経験しているはずだ。
道徳というものは書き直せるものだということを、物心付くか付かないかの時期に学習してしまった。高度成長期に社会の中枢に居た人は、流行に合わせて美徳を書き換えていった。社会もそれに倣った。「道徳というものは、流行に合わせて書き換えていってよいものである」ということを社会全体が承認した。その結果、儒教的な美徳(仁、信、孝 etc.)を善しとする精神が後退した。ポストモダン社会となり、そういう道徳的なものを裏付けているものの根拠が希薄化した。人々は益々道徳的なものを軽視するようになった。

しかし、このように書いていて少し希望が持てた。人々は道徳を失ったことに対するデメリットを感じているはずだ。功利主義的に道徳の社会的メリットが理解されれば、再び道徳を社会の中で体現できるようにすることができるのではないかと思えてきた。